さとやま学校だより07号「圧巻!里山の生き物たち」

 里山と都会の大きな違いの1つは、身近に虫たちがたくさんいるかいないか、という点かもしれません。檜原村に来ると、都会の人たちはあまりの虫の多さにびっくりします。虫嫌いの人だったらなおさらでしょう。
 しかし、虫たちの多様な生態を知ると、今まで全く気づかなかった虫たちの興味深い世界に引き込まれてしまいます。

スケバハゴロモの幼虫

スケバハゴロモの幼虫

 小学生の夏休み自由研究のお手伝いで、畑で暮らす虫を探したことがありました。日頃あまり注意を向けていなかったのですが、いざ探してみると、葉の先や裏や根元のあちこちに、都会では見たこともないような多種多様な虫たちがいて、中には、思わず叫び声を上げたくらい風変わりな虫もいました。優雅なバレリーナのようなスケバハゴロモの幼虫、金ぴかでアクセサリーにしたいようなジンガサハムシ、つぶらな目で私たちを見つめるハエトリグモ、葉の中に忍者のように潜んでいるイモムシの数々など。とにかく予想外のキャラが次々と現れるのです。
 もちろん、畑には蚊のように容赦なく私たちを襲ってくる虫もいます。しかし、8月頃になると虫除け等を使わなくても刺されなくなるのは、天敵のトンボの群れがやってきて、蚊を食べてしまうからです。
 ある時、そのトンボの大群があっというまに姿を消したことがありました。空を見るとそこにはツバメがいて、トンボはツバメに食べられたくなくて逃げたのですね。どうやら、ここでは、自然界の食物連鎖の中に、人間も入っていており、私たちもまた豊かな生態系を作り上げるために貢献していることがわかりました。
 肉食や草食の生き物たちが混然と暮らす里山は又、厳しい生存競争の場でもあります。かつて、ヘビ(アオダイショウ)がカエル(モリアオガエル)を襲う場面に遭遇したことがありました。木の枝でじっとしていたカエルに、静かに背後から近づいたヘビが、いきなりそのお尻に噛み付き、カエルは「ぎーっ」というカエルらしからぬ声を上げてもがき始めました。ヘビは自分の口よりずっと大きなカエルを一気に飲み込めず、さらに時間をかけて、とぐろを巻き、カエルを締め上げようとします。細い木の枝の上での攻防、ちょっとでもバランスを崩すと下に真っ逆さまにおちてしまうような態勢。その集中力、真剣さに心打たれ、思わずヘビを応援したくなりました。肉食動物が生きる厳しさを目の当たりにした瞬間でした。
 工業製品など人が作ったものばかりに囲まれている都会の人をとって、地球の自然の奥深さを感じさせてくれる檜原村は、尽きることのない魅力に満ちています。

さとやま学校だより07号「圧巻!里山の生き物たち」