11月4日 檜原村地域交流センターにおいて、雑穀料理教室「檜原村・食文化探検」第三回を開催しました。
1.ホモロコシご飯
講座の開始時間とほぼ同時にホモロコシを混ぜたご飯が炊きあがりました。ジャーのふたを開けるとお赤飯のような赤いご飯が出来ています。
ホモロコシ(タカキビ)は上野原市西原の畑で作っていた種を分けていただいて、今年からさとやま学校で育てたものです。
ご飯が炊けたので、おかずと味噌汁の調理に取りかかります。この日のおかずは、おいねのつる芋を茹でこぼして味噌を絡めたもの。味噌汁の具は畑で採れた大根とネギ。使っている味噌もさとやま学校の畑で作った大豆を使って作った物です。
「おいねのつる芋」は檜原の在来種で、普通のジャガイモと比べて小さめの芋です。村の畑ではこの芋を同じ畑に年に何度も作ったと言われ、参加者からは「連作障害の強いナス科なのにどうやって?」という疑問も投げかけられました。また、平地の畑で作ると普通のジャガイモの大きさになるというお話もありました。村に多い斜面の畑と平地の畑では何が違うのでしょうか。水はけ、日当り、寒暖差・・・、色々と魅力がありそうです。
出来上がった料理がこちら。
ホモロコシご飯はほんのり甘く、お芋も味噌の香りと塩気が芋の甘さを引き立てます。味噌汁はダシを使わなかったにもかかわらず、味噌のコクと野菜のうまみでおいしく仕上がりました。
増田先生の講座の特徴は、話だけではなく、実際に食べる時間があることです。触って調理して食べることで気付きがあり、作物、食材の魅力に引き込まれていきます。
2.増田先生のお話 「檜原村の在来作物の種保存の現状」
食事を頂いてから、座学が始まります。話のスタートは「村の人から頂いた種をどうしていますか?」という問いかけからでした。
普通、種を頂いたら蒔いて収穫することを考えますが、増田先生は種の保存と情報記録が必要だと考えられていました。種をもらった人は、それがいつどこで誰に栽培されていたか分かりますが、その人が居なくなったり、さらに他の人に分けた場合、種の来歴が分からなくなる可能性があります。きちんと種の来歴を残すために、分けてもらった時には、いつ、どこで、誰にもらった何の種なのかを記録しておけば、どこの種か分からなくならずに済みます。これは博物館などで資料の台帳を付けて整理保管する方法と同じです。
さらに種を次世代に繋ぐために実践している、「冷蔵保存」と「栽培保存」を教えていただきました。冷蔵保存は種を冷蔵庫に入れて保存する方法。これだとヒエは10年、アワは5年ぐらい置いても芽が出るそうです。そして発芽できなくなる前に種をまいて、新しい種を採るのが栽培保存。増田先生は、地元の人に頼んで種の保存のためだけに栽培してもらうこともあるそうです。
昨今、注目されつつある在来品種ですが、栽培されている方の高齢化などもあり存続が危ぶまれる物も中にはあるようです。種が消えてしまわないように、気づいた時に何かすべきことはないか、それぞれが考え行動することが今後必要だと教えていただきました。
3.お話を聞いて
男爵、メークイーン、じゃがいもの品種で私が知っているのはこれぐらいです。でも本当はおいねのつる芋のような在来種が各地にあって、今でも少しづつ作られていることを知りました。ジャガイモだけではなく、米、大根、きゅうり、ねぎ、どんな作物も在来種が存在します。生産量や流通に限りがあってなかなか出会えないのが残念です。生産量が少ない物には、大量生産品とは違った理由で作られている物も多くあります。「孫が好きで毎年送るから」「在来種の方がおいしいから」「種を作って残していきたいから」「祭には欠かせないから」そんなエピソードがついてくるのも在来種の魅力の一つです。
檜原村にもまだまだ眠っている在来種や、それにまつわるエピソードがあるように思います。今後、それらを見つけて表に出してあげることで、村の魅力ある特産品として紹介できるように探していきたいと思います。(樋口潤一)
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公開後、増田先生から次のご意見を頂きました。追記させていただきます。
★穂モロコシの標準名・学名はモロコシです。タカキビは地方名です。
★種保存は冷蔵保存・栽培保存の他に、冷凍保存があり、国のジーンバンクでは冷凍4~5度で保存されているようです。
★ジャガイモの栽培は、年に二度は当たり前で「二度イモ」と呼んでいた地域も全国に多くあります。檜原村の『牛五郎日記』では一年に三度の栽培記録があります。
★在来作物の種の保存については、それぞれの人・グループが個別に保存していても、情報の共有できる状態であることが望ましいと思います。
災害ときには何が起こるかわかりませんので。また情報管理をパソコン等だけに頼るとリスクを伴うと思います。複数個所での保存・情報管理がいいと思っています。
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