さとやま学校だより05号「防獣対策を考える」

 檜原村は、そろそろ本格的なジャガイモの収穫シーズンになりました。水はけの良い檜原村の斜面畑で育つジャガイモの味は抜群で、「ひのじゃがくん」というご当地キャラになっているのもうなずけます。ところが最近、収穫前のジャガイモを猿に盗られた、といった話を頻繁に聞くようになりました。栽培者のみなさんは、その対策に追われ、電気柵をはりめぐらせたり、怖い顔をした案山子を立てたりしています。畑の風景は、私たちがジャガイモ栽培を始めた10数年前頃と比べると、すっかり様変わりしてしまいました。

 都会育ちの人たちにとって野生動物は、動物園でしか出会うチャンスがなく、サルでもイノシシでも村で見かけると、なんだか得した気分がするものです。しかし、実際、丹精こめて育てた作物が、収穫間近に被害を受けると、そんな気持ちは吹っ飛んでしまいます。
 私たちにとっての最大の被害は、昨年の10月に発生しました。栽培中の大豆が、ちょうど枝豆として美味しくなった頃(しかも去年は、かってないほど実がたくさんついていました。)、畑が踏み荒らされ、サル除けのためにかけておいたネットはずたずたに破られ、大豆は一粒残らず食べられてしまいました。やってきたのは、我々が想定して対策をしていたサルではなくイノシシでした。

 そんなわけで、里山での農業は、ここ数年、防獣対策が必須になっています。手間もお金もかかることから、高齢の方々や都会から来た人たちにとっては、農業を続けたり、新たに参入したりすることへのハードルがさらに高くなってしまったとも言えます。斜面畑の再生を1つのテーマとして掲げている当NPOでは、当面は竹や木といった地場材料に加え、安価な材料を組み合わせたりして、なるべく誰でも作れるような防護柵を考案中です。また、檜原村には、農作物の被害を防ぐための電気柵等の購入に対する補助金というありがたい制度もあるので、こちらも利用する予定です。

 獣害問題の一番の解決は、野生動物と人間が良い形で棲み分けることでしょう。そのためには作物に野生動物近づかせないという対策をそれぞれがやっていくことが大切です。当NPOは、地元の方と相談したり、野生動物の特性を学んだりしながら、情報を集め、知恵も絞って、この問題解決に貢献したいと思っています。


さとやま学校だより05号「防獣対策を考える」