さとやま学校だより15号「里山の料理を学ぶ」

 かつて日本の里山では、食事のほとんどは、畑で収穫した作物や、山で採集した山菜、キノコなど、身近な自然との関わりの中から調達したものでまかない、その暮らしは自給自足に近いものでした。そして、冷蔵庫がない時代、食材を美味しく、そして安全に調理したり保存したりする技が生み出され、引き継がれてきました。

檜原村も例外ではありません。交通が便利になり、どんな食材も手に入るようになった現在でも、檜原村には、身近な自然の恵みを生かした料理を作っている方々がいます。
 当NPOでは、折あるごとに地元の方から、土地の作物や山菜などを使った伝統料理や家庭料理を教えていただいて来ました。そして、里山の料理は、店で買った食材を使っている都会の料理とは違う特徴と魅力があるということが分かってきました。

  

 その特徴の一つは、どの料理も地元の食材をベースにして作られていることです。寒暖差が大きいこと、四季の変化が大きいことは、優れた食材を生む条件だそうですが、檜原村の環境はこの条件にピッタリで、素材そのものの美味しさが料理を際立たせています。
 特徴の二つ目は、食品を保存するための様々な技を活用しているということです。山菜も畑で採れる作物も短い時期に一気に収穫するので、それらを干して乾物にしたり、塩漬けにしたり、発酵させたりする保存食作りは、伝統的な生活技術として地域に蓄積されています。現在は、さらに冷凍するという保存法が加わって保存食料理の可能性はさらに広がりました。作るのに一手間必要な市販の乾物すら敬遠しがちな都会の人にとっては、添加物等を使わないシンプルな手作り保存食の味がとても新鮮に感じられます。

  

 そして、何よりも大きな特徴は、里山料理が、自分が食べるものを素材も含めて自らの手で作り出すという暮らしから生まれているという点です。檜原村に元気な年配の方がたくさんいらっしゃるのは、そんな能動的かつクリエイティブな暮らしが、人々をいきいきと元気にしていると確信しました。私たちに里山の料理を教えてくださる先生たちは、まさにこのように元気な方ばかりです。(川上玲子)